花の海に飛び込んだ魚は、うろこが花になり、魚の世界でいうお姫さまになった。花をまとった魚は美しく、誰もが眺め癒しをもらった。そんな存在になった魚は実はただの旅をする魚だった。旅の途中でとんでもないことになってしまったなあ、誰もが羨む存在なのに、その魚は幸せじゃなかった。花が鱗になったくらいだ。なんてことない。そう気持ちを入れ換えて、他の旅の途中の魚に声をかけた。(旅の途中なの?一緒にいかない?)(いえいえとんでもない。)旅の途中の魚にはそう断られてしまった。鱗が花になっただけで、なぜ(いえいえとんでもない。)なの?同じ魚なのに。同じ旅をする魚なのに。魚は外の空気を吸った。いつも海の中で呼吸をしているから外の空気を吸ってみたくなった。花の海に飛び込んだから陸でも息ができるみたいだ。海はダメだ。次は陸を旅しよう。無謀だったが、陸のひまわり畑で身を隠しながらひれを動かしぱたぱたひらひら歩いた。
私には旅が性にあっている。魚はどこかに行ってしまった。